354905 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

詩劇=夢乃月愛花と美しき乙女達

その4~ユメルサイド

ユメルは、いつもどおりに演奏が終わると静かに帰る。街中を通って、この街を出る。しかし、ユメルは、普通に歩いていても、何も変わらない。人々は、ユメルを見ても、すぐそばを通っても、声を掛けたり、話したりはしない。人々は、ユメルの存在を知っている。ユメルには、一つ約束があった。それは、「決して人々と話してはいけない」ことだ。ただ一つだけ、声を掛けられるのは、「本当に心の底から信用できる人だけ」それは、たった一人の大切な人だけ。もし、その約束を破ってしまえば、ユメルは、消えてしまう。それは昔に一緒にいた母親からの約束であった。実は、ユメルの母親には、愛する人がいた。本当に、その男性のことが好きになって、そして結婚をした。その間に出来た子供がユメルだった。しかし、その男性にだまされ、殺されてしまった。ユメルの目の前で殺されてしまった。その男性は信用して、結婚したが、他にも女がいたことで、その男性の為に、全財産を使い果たして、幸せを掴んだと思ったが、それをすべて、他の女の為に使ってしまったと言うことだ。ユメルの母親は、ユメルの目の前で、最後の言葉を伝えた。

「ゆ、ユメル・・・あなたは、私のようになってはいけない。人は見かけでは、絶対に判断をしてはダメ。本当に信用できる人を見つけなさい。たった一人の大切な人と幸せになって・・・」と母親は瞳を閉じた。

それからユメルは、母親との約束を誓い、全く、人と話さなくなった。いくら、話を掛けても黙ったままだった。しばらくしてユメルは、母親の部屋に行った時・・・「フルートと一冊の古いノート」を見つけた。それは、よくユメルが小さな頃に聴くかされていた物だった。それをしばらく手に取ってたユメルは、見つめていた。母親との思い出のフルート。そして、一冊のノートを開いてみると、そこには、母親が書いた曲がたくさん書かれていた。ユメルは、瞳を閉じて、母親との思い出に回想していた。そうしているうちにユメルは、涙を流していた。母親が好きだったから・・・。そしてユメルは決心をした。「私も母親と同じようにフルートを弾く」と・・・・。ユメルは、早速、試しに弾いてみるが、全くダメだった。そして、何度弾いても・・・それは、結構難しいものだった。しかし、ユメルは、ユメルなりの色々と考えて、ユメルだけのオリジナルの音色で弾いてみようと考えてた。「この世で私だけの音色を・・・・聴かせてみたい」と。約5年程して、ユメルは、フルートを完全にユメル独自で弾けるようになっていた。そしてユメルは、母親が亡くなった、この街のこの時計台の下で演奏している。それは、ユメルの弾いているのは、亡くなった母親のレクイエムであった。







© Rakuten Group, Inc.